メンバー/Members

國弘暁子 Kunihiro, Akiko (群馬県立女子大学)
1995年の夏、インド政府給費留学制度の留学生として、私は初めてインド、グジャラート州を訪れました。留学当初は、日々の生活が苦行のように辛かったことを思い出します。それがいつしか、現地の言葉で友人知人と意思の疎通をはかることができるようになると、生活も楽しいと感じるようになりました。日本帰国後、私はグジャラートを自分のフィールドとして、「ヒジュラ」と呼ばれる人々と生活を共にしたフィールドワークに着手します。現地の人々の多くは、ヒジュラのことを忌み嫌っており、私の友人知人も例外ではありませんでした。彼らは自分の体面を汚すことを恐れて、ヒジュラとは一定の距離を保つべきだと考えていたのです。そのため私は、彼らとの関係が壊れることを覚悟で、ヒジュラとの調査に踏み切りました。そして現在は、新たな友人知人、そしてヒジュラの協力を得ながらフィールドワークを継続しています。


 人々から忌み嫌われる「ヒジュラ」とは、男性としての生を捨てて、親兄弟のもとを離れ、女性の装いを纏ったヒンドゥー女神の帰依者として生きる人々です。通常ならば、男性としての生を受けた者は、己の親族の永続化に資する義務を負いますが、ヒジュラになることは、その義務を放棄することになります。親族の永続化に資すことなく、親族との縁を切り、「己」ひとりの死に向かって生きるのです。ただし、ヒジュラとして死を迎えることは、完全な孤独を意味するのではありません。同じく女神の帰依者として生きる仲間と共に、他者の死を経験し合う関係を築き、その役割関係の中で生きるのです。
 ヒジュラと同様に、私自身も、かつて築いていた人間関係を断ち切り、新たな環境の中に飛び込むことで、初めて自分の目的を実現することができたわけですが、人が人との関係を断って独りにならざるを得ない状況や、新たに築いた人間の絆の中で、己としての承認を他者から獲得していく生き方について、この『シングル』研究会を通じて、熟思していきたいと思います。









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